演目:『桜の森の満開の下』(原作:坂口安吾)
日時:令和6(2024)年4月13日(土)14時~
会場:劇団俳小・稽古場(花小金井南町)
午後1時15分、花小金井駅集合。小金井公園の桜は、まだ、見頃を過ぎてはいない。
今日はこれから、劇団俳小「ドラマスクール」の「ワークショップ成果発表公演」を観に行く。劇団のご好意で、小平稲門会がご招待を受けたのだ。「ドラマスクール」は、劇団俳小が主宰する演劇学校。地元小平を中心に、演劇を学びたいというキッズ(小学生~高校生)や、一般人(成人)対象に開かれている。今回は、その、成人の部の、卒業公演というわけだ。
観劇参加メンバーは、山本浩さん、河崎健治さん、「観劇の会」から石井伸二さん、竹内吉夫。
ちょっと時間が早かったので、山本さんのご発案で、「島村農園」に行ってみた。「劇団俳小・稽古場」と鈴木街道を挟んで真向かいにあるここは、「ブルーベリー栽培発祥の地」として知られる農園で、小平から世界にその名を発信した家なのである。聞けば栽培に成功した島村さんは、河崎さんの高校の先輩とのこと。また、竹内も、その方の弟と高校の同級生。今日は、何だか面白い組み合わせと、相成ったものだ。山本さんが家の方から聞いたところでは、ブルーベリーは夏のもので、6~8月に収穫されるそうだ。その頃、また来てみようと思う。
さて、今日のお芝居の原作であるが、坂口安吾の代表作の一つで、傑作との誉れ高い作品。鈴鹿峠に住む「山賊の男」と、妖しく美しい「残酷な女」との幻想的な怪奇物語である。今回は一人一役ではなく、場面、場面で男優4人が「山賊の男」を、女優2人と男優1人が「残酷な女」を演じるという試みである。
一つの役を複数の俳優が演じて行く、その切り換わりが小気味良い。原作に忠実な中に、「今様(いまよう)」のセリフをポンと挟んでみせるウイット。時々、「同じセリフ」を複数の演者が声を合わせてシャウトする。いずれも、観客を覚醒させ集中に導く、見事な仕掛けだ。
初っぱなから良かった。そして終わりまで、ずうーっと良かった。
上演時間53分。やがて劇の終わり、客演尺八奏者、全盲の真藤一彦(しんどう・かずひこ)氏にスポットライトが当たったとき、観客席にいるぼくたち全員の心はひとつになった。熱い思いを込め、雷鳴のような拍手を舞台に送った。
そしたら、それに続く何秒間か、尺八が、また、狂おしくむせび泣いたのだ。客席に、声にならない声が染(し)み透(とお)ってゆく。それはぼくたちの、さらに一皮剥けた感動、なのだった。
「今日、このお芝居を観て、本当に良かった」
もう一人の自分が、そうつぶやくのを、ぼくは聞いた。
稽古場のフロアーに特設された、劇団員手作りの座席には、空席無し。50名を超える観客が押し寄せた。「アトリエ公演」としては、大成功と言えるだろう。
上演後、劇団代表の斎藤真(さいとう・しん)さん、演出の早野ゆかり(劇団俳優座)さん、出演俳優さん、スタッフさん、その他関係者での「打ち上げ」には、小平稲門会を代表して、竹内が参加させていただいた。
芝居後の打ち上げは、ハンパなく盛り上がる。舞台俳優さんばかりだから、皆さん、とにかく声がデカい。お酒が入ると、それがますます、デカくなる。鼓膜破裂に用心しながら、大いに飲み、そして語った。
(文=竹内、撮影=平早勉)