10月の第31回ワイン研究会は、昨年に続いて「第3回ワイナリー見学ツアー」として行いました。
・日 時: 2016(平成28)年10月21日 8時40分出発―17時45分帰着
・場 所: ココ・ファーム・ワイナリー(栃木・足利市)
足利学校、鎫阿(ばんな)寺
・参加者:次の25名(50音順・敬称略)
井垣、伊藤(順)、伊藤(徹)、小川、小平、河崎、国友、栗原、櫻井、佐藤(俊)、末次、竹内、冨平、野村、福田(豊)、村木、村上、山本、横田 (以上男性19名)
荒木、大竹、小林(弘)、坂本、浜田、福田 (以上女性6名)
ワイン研10月例会は恒例となったワイナリーの見学ツアー。前2回の山梨地区から一転、今回は栃木県足利市の山間ワイナリーの見学となった。さわやかな秋の朝を迎えた小平駅前に三々五々集まってきた参加者たち。15名、19名と回を追うごとに増えて今回の参加者は小型観光バス満席の25名。
定刻8:40分 全員勢ぞろいして出発。早々と荒木さん用意のおつまみ付缶ビール(もちろん有料!)を所望する人も。初参加は福田夫妻ら8名。女性が6人とあって車内が華やぐなか、全員が自己紹介してさらに和やかな雰囲気に。バス(メモリー観光)は外環道―東北自動車道―北関東自動車道をひた走った。
足利ICを出て5分、バスは足利の北の山間部に向かう細い道を走ってワイナリーにほぼ予定の時刻に到着。駐車場からワインショップまでの200mの山道を、右に「こころみ学園」の施設建物、左にワイン醸造所を見ながら醸造所屋上にあるワインショップに。
ただいま作業中。こころみ学園の皆さん
ショップのテラスで待ち受けたワイナリーの案内係・池上峻さんが、目の前に迫る約3ヘクタール、平均斜度38度という急斜面に広がるぶどう畑を見上げながら「ココ・ファーム・ワイナリーの生い立ち」について熱く語り、参加者一同熱心に聞き入る。
案内係の説明にメモや写真をとって熱心に勉強中
このワイナリーを語る時、「こころみ学園の園生たちの暮らしと働き」につ いての話抜きでは語れない。今から凡そ50余年前、知恵遅れといわれる子供たちとその特殊学級の担任教師であった川田昇先生(こころみ学園園長)が、生徒たちが生き生きと作業できる畑を作ろうと私財を投じて山を買い、山の急斜面の開墾を始めたのが今日のワイナリーの原点だという。「なぜこんな急斜面にぶどう畑かというと平地は高くて買えず山を買うほかなかったのです」と池上さん。この山の南西向きの斜面を開墾してぶどう畑とし、ワイン造りをする知的障害者たちの働く場所として1969(昭和44)年に障害者支援施設「こころみ学園」を創立、そのワイン醸造場として「ココ・ファーム・ワイナリー」が1984(昭和58)年に設立されたのだという。
山の斜面いっぱい、頂上まで葡萄畑
このワイナリーの特徴は、開墾以来除草剤を撒いたことがなく、ぶどうをワインにする醗酵はすべて天然の自生酵母を使うというぶどうの力を生かしたワインづくりにあるという。あくまでぶどうの個性を生かして作られたワインは、2000(平成12)年の九州・沖縄サミットの晩さん会に供されて一躍有名になった。その後も北海道洞爺湖サミットやJAL国際線ファーストクラスにも使用される高い評価を得ている。「営業マンは?」との質問に「一人もいません。自然と人伝てに評価をいただいて」と池上さん。
現在17歳から92歳まで135名の園生が他のスタッフとともにぶどう栽培とワインづくりに携わっている。平均年齢が53歳。知恵遅れと言われた子供たちが今や立派な農夫となっている。
説明する池上さんの後ろでは作業の撮影中(日テレ)
ワイナリーの説明を受けた後は醸造場を見学。園生たちが熱心にぶどうを選んでいる選果の情景をTVクルーが取材していた。醸造タンクを奥に見て次いでカーブへ。山を刳り抜いたトンネル状の樽貯蔵場にワインが眠っている。「このカーブは、最初は川田先生が自ら人力で掘られ、後に機械で掘削したものです」との説明に、先生の並々ならぬ情熱が伝わってくる。中に入るとワインの貯蔵の樽がずらり。天然の冷暗所だけに流石に涼しいが、樽も自然に呼吸していて僅かながらもワインは蒸発するので補給するのだとか。川田先生が手掘りで始めた天然の貯蔵場
樽が並んだ貯蔵場内
見学のあとはお待ちかねのワインの試飲。池上さんの説明のもと、白、赤、ロゼの3種類のワインを味わう。最初の試飲は「足利呱呱和飲」。JALビジネスクラスで供された甲州、シャルドネ種の白ワイン。
試飲しているところに取材に現れたのが日テレのTVクルー。試飲中のわが女性軍をカメラに収めながら荒木さんにインタビューも。「放映の場合には事前にお知らせします」とはディレクターの弁。果たして?
美味しそうな昼食を前に嬉しそう
かくして約1時間のワイナリー見学を終え、お土産のワインを抱えて一行はJR足利駅そばの系列のレストラン「ココ・スプーン」に移動して昼食に。「豚肉の和風チーズ焼き」がメインデイッシュのコース料理に舌鼓をうち、ワインを飲みながらのしばし歓談の時を過ごした。
まずはオードブルと赤ワインで
昼食を終えて史跡・足利学校へ。「日本最古の学校」といわれ、日本遺跡にも指定の足利学校は平安時代初期、もしくは鎌倉時代に創設されたと伝えられる中世の高等教育機関。1872(明治5)年に廃校になったが、1990(平成2年)に方丈や庭園が復元されて現在の姿になっている。
受付で「足利学校入学証」(入場券デス)をもらった一行。学校門をくぐって杏壇門、孔子廟,さらに講義や学習・行事のための座敷として使われた茅葺屋根の方丈、池と築山からなる南・北庭園などを見てまわった。
これから入門…足利学校の正門の前で
足利学校見学のあとは石畳の小道を散策してすぐ隣にある鎫阿(ばんな)寺へ。4万㎡に及ぶという敷地は、もともとは足利氏の館で、今も四方に門があり土塁と塀がめぐらされていて国の史跡として「日本の名城百選」にも選ばれているという。また、寺としても足利氏の氏寺として整備され、本堂が国宝、鐘楼や経堂などは国指定の重要文化財、その他の建物の多くが栃木県指定の有形文化財となっている。
こうして参加者たちは約1時間をかけて足利が誇る史跡をそれぞれに探訪した。因みに鎫阿(ばんな)寺山門前の石畳路の左側にある病院はこの日参加の小平(おだいら)さんの母上の実家、「ぼくはここで生まれたのです」と生家を背景に記念写真をパチリ。
鑁阿寺を参拝して。左の建物が小平さんご誕生の病院
予定の見学をすべて終えて帰路につく。車中にはいささかお疲れ気味でウトウト組もチラホラ。「そうはさせまい」という訳でもないが、始まったのがビンゴゲーム。「リーチ!」「ビンゴ!」と盛り上がる。ビンゴの景品はご存じカサ グランデのラスク。最後は用意した景品がなくなって、缶ビールやつまみをゲットした人も。「残りものに福!だね」の声も。
かくして第3回ワイナリーツアーは予定通り終了。予定の17時30分を少しまわって無事小平駅前に帰着し、「来年もよろしく!」などの声を残して解散した。
(文=井垣、写真=荒木・国友)
次回の第32回例会は11月18日(金)に「カサ グランデ」で。この日はボジョーレヌーボーの解禁日の翌日とあってヌーボーを味わう会となりますが、すでに満席になりました。会場の都合で参加者は14名迄ですので、12月の例会(12月16日予定)への参加も早めに井垣(090-1196-1471)でお申し込みください。 ワイン愛飲家はもちろん、ワインの世界を覗いてみたい方、どなたでも歓迎です。会費は2,000円プラスワンコイン(任意)です。