◆毘沙門天を祀る古刹[信貴山(長護孫子寺)・多宝塔](生駒郡平群町信貴山2280)
★信貴山へは、近鉄生駒線信貴山下駅からバスで行く。信貴山の中腹の終点で降り立つと、山上の仏都のような風景だ。巨大な堂塔が数知れず密集し、圧倒されてしまう。
★長い参道には、石灯籠の列とともに多くの虎が並び、特に参道入口のものは巨大で度肝を抜かれる。これは、信貴山を開基した聖徳太子が、寅の年、寅の日、寅の刻に、毘沙門天を感得したことによるという。多くの堂宇を眺めながら参道を行くと、一番奥に本堂があり、毘沙門天が安置されている。本堂の舞台からは、奈良盆地が一望のもとにあり、しばらく呆然と眺め回す。
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信貴山(長護孫子寺)・本堂と大虎 |
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★信貴山・多宝塔は、一番高い場所に屹立している。高さ15メートルほど、均整のとれた美しさだ。軒下には彩色された彫刻があり、素晴らしい。江戸時代後期の建立というが、文化財に指定されていないのが不思議だ。
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信貴山(長護孫子寺)・多宝塔 |
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★信貴山は、聖徳太子が物部守屋を討伐後、毘沙門天を祀ったことに始まるというが、長護孫子寺という寺号は、平安時代の明蓮上人の願文からきたという。また、中世ここにあった信貴山城は、信長によって棄却されたが、その後豊臣、徳川によって保護されて、現在の巨大な寺院になったようだ。
★福徳開運を祈念する参詣者は極めて多く、特に正月初寅の賑わいは大変なものという。各堂宇を結ぶ参道または散策路は複雑であり、一日ゆっくりと山上の佛都で過ごすのも楽しいと思う。
◆吉野山の古塔[東南院・多宝塔](吉野郡吉野町吉野山2416)
★東南院は、近鉄吉野線吉野で下車、ロープウェイに乗車して吉野山で下車したところにある。ロープウェイ駅からだらだら坂を登っていくと、金峯山寺の蔵王堂があり、更に5分ほど歩いた右側だ。
★東南院の多宝塔は、各所でやや特徴があり、一定の風格を感じさせるが重い感じもある。高さ13メートルほど、江戸初期の建立とみられるが明確ではない。もともと、和歌山県の野上八幡宮という神社にあったものを、何人かの手に渡って、昭和12年にこの地に移築したものという。大変古い多宝塔なのに、文化財に指定されていないのは、このような移築と改造のためであろう。
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東南院・多宝塔 |
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★東南院は、役小角の開基といわれ、歴代高僧を輩出してきた古刹だという。宿坊として天皇の宿泊もあったそうだが詳細は分からない。ここ吉野山は見るべきものが多く、特に桜の季節はすばらしい。大阪在住当時から何回も来ているが、常に新しい発見がある。
◆後醍醐天皇の御陵がある[如意輪寺・多宝塔](吉野郡吉野町吉野山1024)
★如意輪寺は、前記の東南院のある下千本から、中千本のほうに少し上がり、左手の谷に一旦降りて、また上がったところにある。東南院から一時間ほどであるが、ロープウェイ駅から直接行く道もあって、これも一時間ほどかかる。
★吉野山の中心地からかなり離れているので、大変閑静で清々しい。石段を上がり境内に入ると、実に手入れが行き届き、気持ちが良い。
★入場料を払い、宝物殿を通って多宝塔に行く。多宝塔は、奥の一段高いところに屹立している。屋根の出が大きく、鳥が羽ばたいているような雄大な姿だ。この仏塔は大正15年の建立で、全国各地に建造物を寄進している篤志家の山口氏の寄進したものという。それにしても、大したものを寄進する人がいるものだ。
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如意輪寺・多宝塔 |
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★如意輪寺は、醍醐天皇の帰依を受けて創建されたもので、後醍醐天皇の時に勅願寺になったものという。その後楠木正行も参詣したそうだ。境内から一番奥まったところに、後醍醐天皇の塔尾陵がある。南北朝の頃が偲ばれる風景だ。また、宝物殿には、楠木正行の辞世の歌が書かれた御堂の扉が展示されている。
★静かな境内で多宝塔を眺め、御陵を参拝し、また、宝物殿を拝観したりすると、しみじみと遠い歴史が偲ばれてくる。雑踏する吉野山の中心よりも、更に心が癒される感じだ。
◆庶民の信仰を集める聖天[生駒聖天(宝山寺)・多宝塔](生駒市門前町1−1)
★生駒聖天は、近鉄生駒駅からケーブルカーに乗車、宝山寺前で下車して10分ばかりのところにある。長い参道には灯篭が並び、次第に雰囲気が高まってくる。
★境内に入ると堂塔が密集し、山上の小さい佛都のような感じだ。多宝塔は一番高い場所にあり、均整がとれた美しいものだ。瓦葺きで、高さ14メートルほど。昭和32年に建立された新しいものだが、適当に古色もついて、素晴らしいものといえよう。多宝塔からの眺望は雄大で、大阪府との境にある生駒山の立地を最大に生かしている。
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生駒聖天(宝山寺)・多宝塔 |
境内の堂宇と多宝塔 |
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★生駒聖天は、役小角と弘法大師の旧跡に、江戸時代中期の傑僧が開基したものといわれ、その後各種の推移があったが、明治維新までは勅願寺であったという。現在、近畿36不動霊場等多くの霊場となっていて、全国からの参詣者は極めて多く、大変活気のある寺だ。
★境内には、重文である洋風建物・獅子閣等、多くの一風変わった建物や施設があり、また五重の鉄塔などもあって楽しませてくれる。半日ゆっくり過ごしたい名所だ。
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