・日 時:2010年10月7日(木)午後6時~午後9時
・場 所:市ヶ谷駅前「九龍飯店」
・出 席:板尾由美子・植田厚生・奥原一好・神山和夫・斎藤悦子
佐瀬守良・高橋幸雄・田代勝彦・津村和宏・藤田昌熙
・テーマ:「日本語と漢字」~漢字は我われ日本人に何をもたらしたか?~
・報 告:藤田 昌熙
・はじめに
★普段何気なく使っている漢字。今や誰もが日本語として疑いもなく使っており、これがかつて大陸から伝わった言語・文化だと意識することは少ない。しかし、よく考えてみると、漢字を取り入れたことにより我われ日本人は、世界でもまれにみる複雑な文字形態を発達させてきました。漢字、カタカナ、ひらがなの併用です。一言語で3種類(現在では、アルファベットを加え4種類)の文字を使っている国は、日本しかありません。
★何故、このようなことになったか? それは漢字が外国語だったからです。外国語である漢字だけでは日本語は表現できません。そこで発明されたのが「カタカナ」であり、「ひらかな」です。このように漢字が入ってきて日本語は複雑になりましたが、もし大陸から漢字が入って来なかったら、我が国は文字を持てないままだったかもしれないし。或いはその後独自の文字を創り出せたとしても、それには相当の年月を要したに違いありません。
★というわけで、今回は、誰でも知っている“漢字”について、その特色、メリット、デメリット、併せて戦後紆余曲折した「当用漢字」、「常用漢字」、「漢字制限」、「ローマ字運動」などについて考えてみたいと思います。
・漢字の導入と「カタカナ」、「ひらがな」の創出
★まず、認識しておきたいのは、我われ日本人が縄文時代(BC1万年~BC300年頃)にはまだ文字を持っていなかったこと。弥生時代、4世紀頃から朝鮮半島を通じて(後には直接中国大陸から直接)“漢字”が流入。最初はこの漢字を音読みすることで日本語を表記していました(所謂、万葉がな)。その後、独自に「カタカナ」、「ひらがな」を創り出し、この音・訓併用により漢字を日本語に取り込んだ(例:「山(やま)」)、「川(かわ)」)上、日本語を自在に表記出来るようになりました。
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漢字から平仮名への変化 |
漢字から片仮名への変化 |
(wikipediaから転借)
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・漢字のメリットとデメリット
★このため日本語の表記は「漢字」+「カタカナ」+「ひらがな」と複雑になりましたが、一方、豊富な語彙とさまざまな表現が出来るようになり、日本語を豊かにし、独自の文学、芸術、科学、文化を発達させてきました。但し、問題もたくさんあります。漢字には同じ発音で意味の違う文字(同音異義語)が多く、話していて混乱をまねくことがあり(例:「それは家庭の問題だ」と「それは仮定の問題だ」)、このため無意識に文字(漢字)を念頭に置きながら話す。本来、「言葉があって文字が出来る」筈が、「文字を想定しながら話す」という逆転現象が起こります。
★また、漢字は複雑な上、数が多く、習得するのに時間がかかるので、つねに「漢字制限」や「略字化」、さらには「漢字離れ、漢字廃止」の動きが出てきます。現に、隣の韓国や北朝鮮では「ハングル」を採用し「漢字離れ」が進んでおり、ベトナムは「アルファベッド」に移行。本家の中国ですら「簡体字」を推進、「ローマ字」の併用が進んでいます。わが国においても同様で、「常用漢字」など漢字制限が推進され、一時は「ローマ字教育」なども盛んに行われました。
・漢字の将来
★最近、いくつかの会社で「社内では英語を使う」と決定が下され。話題になりました。 「楽天」に勤務する私の知り合いなど「会議も英語で、大変です」とこぼしていました。漢字については、「こんな複雑な文字には将来性がない」と悲観的な見方がある一方、「一目で意味が分かり、造形的にもすぐれている」と積極的に評価する見方もあります。どちらにも一理ありますが、「文字は文化」、漢字のすぐれた点は大いに評価すべきではないでしょうか。
・おわりに
★今回、 「日本語と漢字」と題して報告させて頂いたところ、地味なテーマにも関わらず皆さんに熱心に聴いて頂き、報告後の質疑応答、ディスカッションも活発、有意義な時間となりました。但し、なにぶん時間が少なく、その上、漢字についてはメリットとデメリットが交錯、また近年日本語の変化も大きく、そのため今回提起した「漢字」に関するさまざまな問題点、「ローマ字化」問題、同じ漢字文化圏中国・韓国・北朝鮮・ベトナムにおける漢字離れ(又は略字化)の問題点・・・等などについてより突っ込んだ議論にならなかったことはやや悔やまれるところです。
★しかし、皆様に「漢字」を取り入れて以降の日本語の変遷を知って頂き、いろいろと活発に議論できたことは大きな収穫であったと思います。短い時間で結論の出せるテーマでなかっただけに、いつか又機会を頂き、次には「これからの日本語のあり方」、「漢字を排した近隣諸国との関係」・・・等について話し合えればさいわいです。
・「59MEETING」10月例会資料
●日本語の特色:
・日本語は、主語+目的語+動詞(私は学校へ行く)。
・母音(あ・い・う・え・お)、子音が少ない。
・漢字+ひらがな+カタカナ+アルファベッド
・漢字に同音異義語が多い。
●漢語(漢字)の特色:
・漢語は、主語+動詞+目的語(我去学校)。
・母音(a,o,e,i,u)+子音が多い。
・一語完結(去、来、走、見、動・・・)。
・表意文字が多く(山・川・草・木・・・)、造語が容易・豊富。
・声調(四声)があり、原則として同音異義語はない。
●漢字がもたらしたメリット:
・日本語に「文字」をもたらした。
・日本語の語彙を増やし、豊かにした。
・「カタカナ」、「ひらがな」を産み出す要因になった。
・表意文字「漢字」による文化向上。
・高い文化性(19世紀中葉、植民地になるのを防いだ?)
●漢字がもたらしたマイナス要因:
・「和語(日本語)」の発達を阻害した。
・「漢字」は日本語とまったく構造が異なる。
・日本語を複雑にした(漢字、カタカナ、ひらがな)。
・同音異義語による混乱。
・長期の学習時間(読み・書き)。
●同音異義語:
★日本では、漢字の同音異議が多くて苦労する。
(例)小・商・章・省・賞・症・相・証・生・将・勝・称・性・招・衝・請・翔・紹・昌・尚・匠・奨・渉・祥・娼・廠・床・哨・消・正・升・・・。「貴社の記者は汽車で帰社した」・・・等など。
●「漢字の国」中国の悩み(翻弄される翻訳局):
★一方、カタカナ、ひらがなのない中国では、すべて漢字であり、新しいことばに対していちいち造語しなければならず、翻訳専門の役所を設けて対応しているが、グローバル時代、今や対応に苦慮している。但し、傑作もある~(例)「口可口楽」(コカコーラ)、「電脳」(コンピュータ)、「人民網」(ネット通信)など。
●「ハングル」に切り替えた韓国・北朝鮮、「ローマ字」に切り替えたベトナムの悩み:
★漢字をやめた韓国、ベトナムでは、ハングル、ローマ字だけではすぐ意味がわからないことが多い~(例)ハングル、「スソ」では何のことかわからないが、「水素」ならわかりやすい。
●評判の悪かった「ローマ字」推進:
★戦後、我が国でも小学校で「ローマ字」の授業があったが、漢字の入らない文は内容が理解し辛く、あまり普及しなかった~(例) KYOU WA IITENKI DESU。
●漢字を除いた日本語教育は・・・:
★外国での日本語教育では、漢字は難しいのでカタカナとひらがなで教えるケースが多いが、表意文字でないので内容がつかみ難い(これはローマ字も同じ)。
●日本語と漢字~今後の課題とあるべき方向(まとめ)
・問題点は多いが、日本語から漢字は外せない。
・但し、昔からの日本語に無理に漢字をあてはめる必要はない。
・ローマ字化は不要。・戦後進めてきた「漢字制限」は再検討すべき。・カタカナの氾濫は、日本語を弱体化する。
(参考)
●万葉がな
如葦牙因萌騰之物爾成神名、宇摩志阿斯可備比古遅神・・・(「古事記」創世の条)
(葦かびのごと、萌えあがる物によりて成れる神の名、ウマシアシカビヒコヂの神)
●平がなのもと
あ(安)、い(以)、う(宇)、え(恵)、お(於)、か(加)、き(幾)、く(久)、け(計)、こ(己)
●片かなのもと
ア(阿)、イ(伊)、ウ(宇)、エ(江)、オ(於)、カ(加)、キ(幾)、ク(久)、ケ(介)、コ(己)
●和製の漢字
榊(さかき)、辻(つじ)、峠(とうげ)、裃(かみしも)、丼(どんぶり)、躾(しつけ)
●日本語にとけこんだ漢語
門、段、縁、肉、茶、菊、竹、銭、天、地、恋、粋、精、念、恥、誇、根、勘、相(さが)
●漢字の意味の転用(カッコ内が漢語の意味)
遠慮(遠い先の心配)、迷惑(迷い戸惑う)、稽古(古い時代を思い出す)、大丈夫(一人前の立派な男)、留守(留まって城を守る)、利口(口の上手な者)、熱中(いらいらする)
●明治時代の新造語漢字
経済、哲学、汽車、汽船、洋服、電話、商法、消費、貿易、芸術、数学、学術、地理、天文、芸術、心理、物理、現象、立法、行政、実験、観察、科学、医学、概念・・・
(参考書籍)
・高島俊男著「漢字と日本人」(文藝春秋社)
・三浦つとむ著「日本語はどういう言語か」(講談社)
・鈴木孝夫著「ことばの人間学」(新潮社)
・大野 晋著「日本語をさかのぼる」(岩波新書)
・大島正二著「漢字伝来」(岩波書店)
・ 〃 「漢字と中国人」(岩波書店)
・山口仲美著「日本語の歴史」(岩波書店)
・李 寧熙著「日本語の真相」(文藝春秋社)
・石川九楊著「日本語論」(青灯社)
・ 〃 「二重言語国家・日本の歴史」(青灯社)
・山口謡司著「ん」(新潮社)
・水村美苗著「日本語がほろびるとき」
・鈴木孝夫著「日本語は国際語になりうるか」(講談社)
・ドナルド・キーン著「日本語の美」(中央公論社)
・板坂 元著「日本語横丁」(講談社)
・川本茂雄著「ことばとこころ」(岩波書店)
・藤堂明保著「漢字の過去と未来」(岩波書店)
・林 望著「日本語は死にかかっている」(NTT出版)
・大野 晋著「この素晴らしい国語」(福武書店)
「日本語と漢字」~皆様からのメール
★普段何気なく「日本語と漢字」について話すことになり、何を、どのように話したらよいか、皆さんからヒントが頂けないか・・・とメールしたところ、示唆に富んだ多くの返信を頂戴しました。(藤田昌煕)
(順不同・敬称略)
◆李 寧熙著『日本語の真相』、『もう一つの万葉集』について
「日本語と漢字」というテーマに関して、作家の李 寧熙(イ ヨンヒ)氏が『日本語の真相』(文藝春秋1991年刊)の中でつぎのように述べています。
「古代韓国語が古代日本語になり変っていった。日本語の原形を調べると、韓国語が出て くる。万葉集や『古事記』、『日本書紀』、『風土記』が書かれた頃の言葉を洗い出すと、
それが韓国語。7世紀~8世紀に書かれた文献で日本語としても漢文としても読めないとき、それは古代韓国語を表記したものである可能性が高い」
なお、彼女は『もう一つの万葉集』(文藝春秋1989年刊)の中で、「万葉集はそのほとんどが古代韓国語で詠まれている」と断定しています。 (大木 壯次)
◆漢字の制約は、日本人の劣化をもたらしている?
おもしろいテーマに挑戦していらっしゃいますね。英語を翻訳する場合、できるだけ漢字を使わず、ひらがな、つまり大和言葉で表現すると、意味が通じるという体験を皆さん、お持ちと思います。そのあたりに日本語の秘密がひそんでいるように思います。漢字とカタカナ、ひらがなを使いこなすことで、日本人独特の感性が養われたようです。韓国、ベトナムなど が漢字を失ったことによるマイナスは言うまでもありません。
以下、大学の講義で使ったものや、最近の興味深い本をいくつか、ご参考までに。
・『日本語の正体』(三五館) 著者は韓国人の言語学者。405年に来日した王仁が漢字の読み下し文を日本にもたらした。今の日本語の構成はかつての百済語に近い、といった論旨です。
・書家の石川九楊の日本語論もおもしろいです。漢字から片仮名、ひらがなを生みだした ところに、日本人の文化の受容方式の特徴が際立ってうかがえると指摘。
それから、表意文字という視点から言えば、IT化が進む中で、ものを考えない人が増えて きているという状況にかんがみ――思考パターンの一つとして、日本人は漢字をビジュアル にとらえる、つまり、思考を伴って文字を見ているので、単純なアルファベットでしか伝達できない国の人々に比べ、頭脳の優秀さを育むことにつながっているという、議論もしてほしいところです。漢字の数を制約している国語政策は日本人の劣化をもたらしているという議論 にもつながるでしょう。 (桐山 勝)
◆高島俊男さんの「漢字と日本人」は、まさに“目からうろこ”でした。
私も、「日本語と漢字」にはそれなりの興味を持って、何冊かの本を読み漁りました。その中で、特に高島俊男さんの「漢字と日本人」は、それまで抱いていた漢字に対する私の思い(疑問)に見事に応えてくれた内容で、まさに「目からうろこ」の思いでした。他に、「漢字伝来」(大島正二著、岩波新書)、「日本語の歴史」(山口仲美著、岩波新書)なども、漢字との出会いのあたりに触れていて面白かった。
高島さんの書にもありますが、日本語が最初に出会った文字が漢字でなくアルファベット(例えば英語)であったらどうだったろう、と想像するのも楽しいものです。最初に出会ったのが漢字でなく表音文字であったとしたら、その後の日本語の発達はどうなっていったのか、想像は尽きません。 (荻野 滋生)
◆大野 晋先生が指導教授。
今回の話題は、私よりも妻の方が関心があるのではないかと思います。参考書とし挙げられている大野晋先生は指導教授で、懐かしい思いもあるとか。 (山本 興一)
◆アメリカ人に対する日本語レッスンでも、やはり漢字を教えるべき。
「日本語と漢字」に関して、最近感じていることをお伝えしたいと思います。
1.私は、現在、当地シンシナチ(オハイオ州)のInternational Language Schoolでアメリカ人 エンジニアに日本語とビジネスカルチャな どをマンツーマンで、週2回(1回2時間)教えて います。
2.テキストは、学校側から支給された 「Japanese for Busy People」(國際日本語普及協会版)を使用。テキストに従い、まず「Hirag ana(ひらがな)」、「Katakana(カタカナ)」の発音を教えます。また書き方も教え、宿題として自宅で練習させます。
3.テキストの各レッスンの日本語文章は、ひらがな とカタカナで構成。その文章を、外国人 が発音しみやすいようにローマ字でも記 載されています。
4.生徒が日本語を読む発音は、ひとつ一つの単語の意味を把握しながら読むのではなく、極めて平坦になります。そして、教える私 にとっても、ひらがなのみの文章を読むのが、 時折、難解に思う時があります。
5.この私の経験から、私は、アメリカ人に対する日本語レッスンで、ひらがな、カタカナ、ローマ字のみならず、やはり漢字も教えるべきであると思いました。
6.しかし、漢字には訓読、音読とあり、覚えるのも、また教えるのも難しいです。アメリカ人に、日本の小学校で学ぶ常用漢字の多いことを説明すると、驚いていました。
7.とにかく日本人にとって、ひらがな、カタカナ、漢字の伝統文化の下で、国際化の波を受け、英語や増える新しい単語を覚えることは、大変な努力、時間を要しますので、次の世代に 向けて何か合理的な方法がないものかと考えます。 (伊藤 正彦)
◆水村美苗の「日本語がほろびるとき」を読んで・・・
今回の「日本語と漢字」は、大変勉強になりました。水村美苗の「日本語がほろびるとき」を読んでいろいろ感じましたが、漢字と日本語についても、考えると難しいです。 スペイン留学から帰ってきた孫が、スペインで一緒だった中国人学生と文通しています。スペイン語で往復しているのですが、宛名の名前は漢字で書いてきます。その漢字の上手 なこと! やはり、日本の文字は中国から頂いたということを実感させられます。 (保谷 裕子)
◆なんと日本語の複雑なことか!
おもしろいメールをありがとうございました。最近、息子に日本語を英語に訳してもらう際によく思うことは、なんと日本語の複雑なことか!ということ。英語に訳すと、それは簡単な文章になってしまいますよね。難しく考えることはないのね・・・と思うのですが、簡単な文章が日本人には難しく・・・。主語を省くのも日本人くらいだとか?
日本人はこだわりが強いからこうなったような気がします。
もともとの国の言葉を重視する? からなのか、外来語も中国のように漢字にしてしまって独自の言葉を作ればいいものの、何かそれではニュアンスが違う気がして、そのままの言葉をカタカナにする。これって、パリで「かわいい」は「かわいい」でなくてはニュアンスが伝わらないのと同じで、こういうところにこだわる。
話は飛びますが、だから日本食もおいしいんだと。先日、パリ出張で、今話題の一つ星レストランに行ったのですが、これがまるで日本食。食材を生かし、味付けはあくまでもシンプルに・・・。星が付けば付くほど“日本食化”していっているような気がします。最近、星付きのレストランには、必ず日本人がいるとか。
でも、少し前までは、なにもわからない日本人が星付きレストランに来て・・・というイメージだったのですが、最近は日本人歓迎ムードが漂っていて・・・。日本人が認めたら○みたいな?ミシュランのおかげでしょうか??
でも、やっぱり、日本のフレンチの方が断然おいしいです! (平内 幾与)
◆日本語の将来はどうなるのか、心配でもあり興味もあります。
昨日のテレビで、最近の若者が難しい漢字を使うというのを見ました。パソコンや携帯で簡単に検索できることで、漢字に興味をもったとのことです。私などは、パソコンのせいで難しい漢字は読めても書けなくなっています。日本語の将来はどうなるのか、心配でもあり興味も あります。 (保谷 裕子)
◆中国では、最近、簡体字からまた旧文字に戻そうという動きも・・・
漢字代々の歴史から見ると、「表意文字」という性格から字数がどんどん増えて行く。 一方、字数を減らしたり簡略化する試みも同時に変遷の歴史を辿った。現在の「簡体字」は、文革の際の周恩来の主導(1958年)に基づきます。最近では、簡体字からまた旧文字の繁体字に戻そうという動きも出始めています。尚、漢語の中には西欧の語彙を日本語に訳され、それが中国語に定着している例が多い事も再認識すべきです。 (北浦 真幸)
◆漢字に対するこだわりが、人それぞれにあるようです。
私は、長く高校教師をしていたので、知らず知らずのうちに、教科書の文字遣いになじんでしまっています。それで、日常は、常用漢字以外の漢字は、ほとんど遣っていません。妻は、手紙を書くときなど、辞書を引きながら、漢字を多用しています。私が、「そうまでして漢字で書く必要はない」というと、「漢字を知らないと思われては恥ずかしい」と言います。漢字に対するこだわりが、人それぞれにあるようです。
(津村 和宏)
◆「高嶺の花」は、今や「高根の花」に。
日本でも漢字が表意文字から表音文字になってきつつあります。例えば、「高嶺の花」は、今や「高根の花」に。「そんなバカな!」という方がおられるでしょうが、国語辞典にも事例が出ており、昨日の読売新聞にもありました。使う漢字を制限するから、こういうことになるのでしょうか? (奥原 一好)
◆漢字は日本で発達して定着しているのではないでしょうか?
今回の「漢字」の問題は、小生にとって重いもので、ご返事が遅れました。私は漢字、和語、ひらかな、カタカナ等を意識して使った記憶がありません。但し、ローマ字はパソコンの入力に必要なので、最近使用しています。困った事は、ローマ字表示の駅名が電車通過時によく読めないことです。外国人が増えた所為でしょうね。漢字なら一字だけでもなんとかなるのでしょうが・・・。
万葉かなについては、奥の細道を歩いた時や、歌碑、句碑を読むときに万葉かなで書かれていることが多くて、読めない時がありました(時間の経過で文字が薄れていた所為もありましたが)。
ところで、漢字は日本で発達して定着しているのではないでしょうか? 漢字のない生活は想像できません。俳句は文語で詠むので、文語で悩む時には漢字を使用して逃げています。 (日吉 忠弘)
◆ガルブレイス著「ゆたかな社会」第二章~通念というもの~
人は、生まれる国や言葉を選ぶことはできません。国語は難しいと気づいたときには、もうもうそれをすっかり身につけているでしょう。自国語の、アレがいい、コレがよくないということができても、個人には、それを変革するまでの力はありません。国語審議会委員でもないし、意見を求められてもいないのです。
貴君の強い問題意識が、今回のテーマを選ばしめ、その準備をした。しかし、一般の人にとって、「なるようにしかならないものさ、国語は」というところでは・・・。少しく古い書物ですが、ガルブレイスの「ゆたかな社会」の第二章~通念というもの~をお読み頂くと、ヒントが得られるかもしれません。 (森 泰生)
◆興味深く、密度の高い内容で、参考になります。
『いなほ随想』第三集「日本語と漢字~漢字は我われ日本人に何をもたらしたか?」を拝見しました。興味深く、密度の高い内容で、参考になります。稲門会のホームページ、ますます充実・・・ですね。 (大木 壯次)
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